6月8日(土)から音声学の短期講座がはじまります。

2022.11.10 二項述語階層

 いやー色々ありました。

能楽の話

 能楽についての講義を受けました。いろんな先生からお話を聞くという形の講義で、今回は能楽。能楽とは能と狂言のことで… と色々説明されたけど実のところよく分からなかった。分からなかったけど、古いものをそのままの形で守る勢力と現代風に変えようとする勢力がいてぶつかり合っているらしい、ということは分かりました。日本語で言えば日本語の揺れと客観的に言葉の変化を捉える人たちもいれば、日本語の乱れと批判的に捉える人もいます。どんな分野でもそうなんだなと思う。また、古くからある能を復活させるときに、昔のまま復活させるのかアレンジして復活させるのか、どっちがいいのかという議論がありました。私は正直のところアレンジして現代人に分かりやすくしたほうがいいと思ったんですが、先生の意見は私とは逆で、しかもその考え方には頷けるものがありました。アレンジしないで誰が演じてもこうする、と型を決めると、役者はその中で自分の個性を発揮する部分を探して「内的探求」ができるって。アレンジすると誰もが自分の方法でやるから内的探求というよりも表面的なものになってしまうだそう。これはなるほど。

言語を0から作る

 言語を0から作ろうとするときに一体どんなことを考えないといけないんだろうという話をしました。音韻のほうは一旦無視して、文法的な話に絞ります。本を読んでたら格の表し方が3つもあるって書かれていました。一つは語順、もう一つは名詞の語形変化(曲用)、もう一つは名詞の前や後ろに格助詞を置いて述語との関係を表す方法。日本語は3つ目の方法をとってます。じゃあ言語を0から作ろうとするなら、格の表し方をこの3つから選ぶか、あるいは新しい表し方を生み出すかしないといけないです。他にも、テンスもアスペクト、モダリティ、ヴォイス、肯否… それらの語順とか。基本語順も。いやー、いろいろ決めないといけないんですね。こうやって0から言語を作ってみようと考えることは、言語の普遍性を考える機会にもなりました。つまり、全ての自然言語に存在する要素は言語に普遍的に存在するものであって、人工言語にも組み込まないといけないはず。でもその普遍的に存在するものが何か、私はすべて知ってるわけじゃないです。とすると今の知識では言語を生み出すってことはできないんだなと思いました。他にも、エスキモーは雪に20~30だったかの種類があるけど日本はそれよりも少なかったり。事物の名称を付けて名詞を決めようとするとき、人は持ってる言語の範囲でしか事象を捉えられない。サピアウォーフの仮説ってやつですけど、こういう制約がある以上、私が新しい言語を作ろうとしたらどうやっても母語である日本語の影響を受けてしまうことは避けられません。グループで言語を作ってみよう!なんていう授業があったらきっと面白い授業だろうなと思いました。
 それから二項述語階層。これはすっごい面白い。動詞の他動性は文法規則に関わっている。何が他動詞で何が自動詞かは言語によって違う。だから他動性の捉え方って言語によって違う。で、他動性がどのように違うのかを理解するのに二項述語階層が役立ちました。日本語には「壊す」のようにものに変化を与える典型的な他動詞もあるけど、「本を見る」のように「壊す」ほど変化を与えてるとは考えられないものにもヲ格を使います。ここで説明しにくいんだけど、そんなことを勉強しました。

録音

 中国人留学生を招いて会話を録音してみるという授業をしました。録音するときに何を準備するか、どうやって会話を進めるかみたいな技術を学ぶ授業です。今後私の研究に役立つかもしれないので興味深い。録音中、ついつい話が弾んでオーバーラップしてしまったり、メモが雑になったり、気になる質問をメモに書かなくて次回に繋がらなかったり、時間をメモし忘れたり… 初めてだったから色々分からないことがあって失敗がありました。しかし実際に行う前に失敗というか、経験しておいてよかった。フィールドワークということで大変収穫がありました。今後この録音を分析して… というのが待っているんですけど、それもそれで面白そう。

第二言語習得研究の院生

 他の院生と話する機会がありました。その人は第二言語習得研究の人。すっごい話が面白かった。私は日本語教育能力検定試験で出るような表面的な知識しかなかったけど、少なくても知識があってよかった。もしなかったら彼の言ってることは全く分からなかったと思う。それから日本語教師の教育現場の話をこっちからふっかけたら、その人は理論ではこうみたいな話を返してくれた。現場と研究は違うものかもしれないけど、話が通じることが非常に楽しかったです。自分の専門をよどみなく話せる様子を見るとやはりカッコいい。




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