「財布が盗まれた」は直接受身、「財布を盗まれた」は間接受身?

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日本語Q&A

質問者さん
(日本)

 「財布盗まれた」は直接受身、「財布盗まれた」は間接受身(持ち主の受け身)だと見たんですが、こんがらがってしまいました。

管理人

 まずはどちらも省略されている補語や連体修飾部を補完します。すると「私の財布が Aに 盗まれた」「私が Aに 財布を 盗まれた」となります。これに対応する能動文はどちらも「Aが 私の財布を 盗んだ」です。受身文と能動文の補語の数を比較すると、前者は2つで一致しますが、後者は3つと2つで一致しません。したがって前者は直接受身で、後者は間接受身で間違いありません。

「財布が盗まれた」は直接受身

 (1a)「財布が盗まれた」には誰に盗まれたのか、誰の財布が盗まれたのかの情報が抜けているので、まずは受身文の全体像を把握するために省略されているものを補完します。すると(1b)のようになります。そしてそれに対応する能動文は(2)です。

 (1)a 財布が 盗まれた。
    b 私の財布が Aに 盗まれた。 <受身文:補語2つ>
 (2)  Aが 私の財布を 盗んだ。  <能動文:補語2つ>

 受身文と能動文の補語の数が一致する場合は直接受身、そうでなければ間接受身です。これに基づいて(1b)と(2)の補語の数を比較します。(1b)の補語は「私の財布が」と「Aに」の2つで、(2)の補語は「Aが」と「私の財布を」の2つです。補語の数が一致しますから、(1)は直接受身です。

「財布を盗まれた」は間接受身

 (3a)「財布を盗まれた」も誰が誰に盗まれたのかの情報が文中に示されていません。この部分を補完したのが(3b)です。この受身文の補語は「私が」「Aに」「財布を」の3つで、対応する能動文(4)における補語は「Aが」「私の財布を」の2つになります。補語の数が一致しないので間接受身に分類されます。

 (3)a 財布を 盗まれた。
    b 私が Aに 財布を 盗まれた。 <受身文:補語3つ>
 (4)  Aが 私の財布を 盗んだ。   <能動文:補語2つ>

 受身文(3b)のガ格名詞「私」とヲ格名詞「財布」の間に所有関係が認められるため、能動文(4)におけるヲ格名詞には「私の財布」と所有の「の」が現れます。この種の間接受身文は、持ち主の受け身と呼ばれるものです。




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