波及効果(washback effect)
波及効果(washback effect or backwash effect)とは、テストが指導に与える影響のことで、主に第二言語教育とそのテストに関係した分野で議論されている概念です。英語では washback あるいは backwash と呼ばれていますが、Alderson & Wall(1993)はこの2つは意味的にも語用論的にもまったく差はなく、同じであると述べています。具体的な影響としては、公的な試験は教師と学習者等に動機づけを与えて行動を左右することが挙げられます。例えば、試験があることによって学習者がそうでないときよりも一生懸命に取り組むようになったり、あるいは教師が授業で主に試験の過去問を参照し、その試験の出題形式に合わせた指導が行ったりする傾向があります。
波及効果には、特定のテストが学習者指導に与える正の影響(beneficial washback or positive washback)と負の影響(negative washback)があります。一般にテストが悪いものであればその影響は負のものになると考えられ、テストが良いものであればその影響は正のものになると考えられます。しかし、悪いテストだからといって正の影響を与えないわけではなく、良いテストであれ悪いテストであれ、テスト自体が学習者に授業に集中させたり、テストの準備をさせたりと外的な動機づけを与えることがありますし、逆に良いテストであっても、テストを受けなければならないことが学習者に不安を生じさせたり、また学習者が低い点数を取るかもしれない事に対する教師の罪悪感などがカリキュラムの範囲を狭めるといった負の影響を生むこともあります。
参考文献
Alderson, J.C., Wall, D. (1993). Does Washback Exist? Applied Linguistics, 14:115-129.
ライル・F. バックマン(著)・池田央(監)・大友賢二(監訳)・笠島準一(訳)・服部千秋(訳)・法月健(訳)(1997)『言語テスト法の基礎』C.S.L.学習評価研究所
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