サジェストペディアとは?

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サジェストペディア(suggestopedia)

 サジェストペディア(suggestopedia)とは、ブルガリアの精神科医のロザノフ(G.Lozanov)が自身の研究過程を通して確立した暗示学(Suggestology)の理論を外国語教育に応用して開発した教授法で、暗示的教授法とも言います。緊張や不安などから解放された心理状態を実現し、人間の持つ潜在能力(reserve complex)を引き出すことが言語習得を促進させるという考え方に基づいています。サジェストペディアが行われる教室はカーペットや壁紙、家具、絵画、室温や光にも注意が払われた居心地のいい部屋が用いられ、学習者はそこで豪華な椅子に座り、くつろいだ状況で授業が行われます。

 サジェストペディアの授業はイントロダクションコンサート・セッションエラボレーションの3つのステップからなりますが、以下に紹介するように他の教授法とは相当異なる手法をとるので一般に広まってはいません。

1.イントロダクション(Introduction)

 イントロダクションでは、教師がその授業で学習する内容を学習者に簡単に紹介します。紹介する方法は会話や絵、動画、身体動作など様々な方法が用いられますが、詳細な解説や質疑応答はしませんし、発音や文型練習などは行いません。扱う内容は学習者と強い関わりをもったもので、学習者の興味をひくものが望ましいとされています。

2.コンサート・セッション(concert sessions)

 コンサート・セッションでは、学習者は椅子に座り、さながらコンサートを聴くかのような感じでアクティブ・コンサート(active concert)とパッシブ・コンサート(passive concert)の2つが行われます。

 アクティブ・コンサートでは古典派やロマン派の音楽を流し、教師はそのリズム・音量・速度に合わせて教師がテキストを朗読して、学習者は目標言語の訳を見ながらそれを聞きます。朗読される内容は音楽と一致する必要はないですが、朗読をオーケストラに調和させるように行うことが求められます。学習者はテキストを見たり、書き込んだりして授業にアクティブにかかわることからこのように名付けられていますが、教師の後に続いて繰り返したりすることはしません。
 パッシブ・コンサートではバロック音楽を流し、教師はテキストをその音楽に合わせた抑揚で朗読します。学習者はアクティブ・コンサートとは違って、それを目を閉じて聞くだけです。授業に受動的(パッシブ)にかかわるため、このように名付けられています。

3.エラボレーション(Elaboration)

 この段階ではコンサート・セッションで導入された学習項目の定着を図る目的で練習を行います。できるだけ学習者に不安や緊張をさせないように、歌や踊り、各種ゲーム、ロールプレイなどのコミュニケーションを通じて楽しめる練習が行われます。

参考文献

 石田敏子(1988)『日本語教授法 改訂新版』35-37頁.大修館書店
 鬼木和子(1998)「サジェストペディア」『日本語教授法ワークショップ』104-128頁.凡人社
 木村宗男・阪田雪子・窪田富男・川本喬(1989)『日本語教授法』61-62頁.おうふう
 高見澤孟(2016)『増補改訂版 新・はじめての日本語教育2 日本語教授法入門』172-173頁.アスク




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