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措定文と指定文とは?

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措定と指定

 措定と指定(三上 1972: 44)とは、名詞述語文(コピュラ文)の「だ」「です」「である」の用法に現れる違いのことです。最も重要な統語的特徴として、「AはBだ」において「BがAだ」にできるかどうかの違いが挙げられており、「BがAだ」にできないものはBがAの属性を解説することから措定「BがAだ」にできるものはBがAと一致することを表すことから指定と呼ばれます。それぞれ、措定を表す名詞述語文を措定文、指定を表す名詞述語文を指定文と言います。

措定文

 措定文「AはBだ」において、Aが表す事物が述語Bが表す属性を具えていることを表します。すなわちBはAの属性について解説を加えるものです。Bの位置には名詞以外にイ形容詞やナ形容詞も現れることができます(3)(4)。これら形容詞もAの属性や性質を述べるものであるため、同じく措定を表します。Bは属性を表すだけで特定の指示物を指さないため、指定にはならず、「AはBだ」を「BはAだ」に転換することはできません。

 (1)a コウモリは哺乳類だ。
    b *哺乳類はコウモリだ。
 (2)a 猫はかわいい生き物だ。
    b *かわいい生き物は猫だ。
 (3)a 猫がかわいい。
    b *かわいいのは猫だ。
 (4)a 大谷翔平は天才だ。
    b *天才なのは大谷翔平だ。 

指定文

 指定文「AはBだ」において、Aが表す事物がまさに述語Bそのものであると排他的に指定する文です。Aと同じ属性を持つものをBで表現するため、「AはBだ」を「BはAだ」に転換することができます。
 三上(1972: 46)は、代名詞は指定にしか使われないことを指摘しています。(5)には代名詞「彼」、(6)には「これ」が含まれており、確かにいずれも指定を表しています。

 (5)a 彼は1班のリーダーです。
    b 1班のリーダーは彼です。
 (6)a 私の本はこれです。
    b これは私の本です。
 (7)a 私が昨日見た映画は「恋空」です。
    b 「恋空」は私が昨日見た映画です。

参考文献

 庵功雄(2001)『新しい日本語学入門―ことばのしくみを考える』255-256頁.スリーエーネットワーク
 長屋尚典(2014)「タガログ語の措定文と指定文」『東京外国語大学論集』(88),pp.117-144
 三上章(1972)『現代語法序説 シンタクスの試み』40-50頁.くろしお出版




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