リキャスト(recast)
訂正フィードバックのうち、学習者の誤った部分のみを訂正して自然な形で繰り返すタイプのフィードバックをリキャスト(recast)と言います。暗示的に正用を提示するフィードバックに分類されます。
(1) 学習者:富士山はきれかったです。
教 師:そうですか。きれいでしたか。
(2) 学習者:あそこで鳥がいます。
教 師:本当ですね。あそこにいますね。
(3) 学習者:私は将来日本語先生になりたいです。
教 師:いいですね。日本語の先生。
例えば(1)では、学習者の誤用「きれかった」を訂正して正用「きれいでした」を提示していますが、提示の仕方は暗示的で、コミュニケーションの流れをあまり止めずに自然な形で実現されています。(2)でも「あそこにいますね」、(3)でも「日本語の先生」と正しい言い方に直して繰り返しています。このように間違った部分のみを訂正して正用をさりげなく繰り返すようなフィードバックがリキャストです。
リキャストはフォーカス・オン・フォーム(FonF)の考え方に基づく指導によく用いられ、自然なコミュニケーションの流れの中で学習者に言語形式に注意を向けさせることができると言われています。
参考文献
大関浩美(2010)『日本語を教えるための第二言語習得論入門』93-123頁.くろしお出版
小柳かおる(2004)『日本語教師のための新しい言語習得概論』127頁.スリーエーネットワーク
白畑知彦・若林茂則・村野井仁(2010)『詳説 第二言語習得研究 理論から研究法まで』132-135頁.研究社
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