令和6年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題11解説
問1 インプット仮説
インプット仮説はクラッシェンが提唱した第二言語習得理論であるモニターモデルの仮説の一つです。この仮説では、学習者のその時点のレベルよりも少し高いレベルの理解可能なインプット(i+1)に接触することが習得を促進すると考えます。
1 ???
2 学習項目はiなので、このインプットはi。+1が足りないので違います。
3 「理解可能なインプット」とあります。これが答え
4 ???
答えは3です。
問2 明示的知識と暗示的知識
ここでいう明示的な知識とは、簡単にいうと言葉にして説明できる知識のことです。大化の改新は何年かとか、なぜ起きたのか、とかそういうことは言葉にして説明できます。しかし暗示的知識は言葉にして説明できない知識であり、自転車の乗り方がよく挙げられます。自転車はどうやって乗るのかを明確に言葉で説明することが難しく、しいて言えば練習するうちになんとなくできるようになったっていう感じだと思います。これは言語でも同じで、私たち日本語教師は別にして、普通の日本人はどんなときに「は」を使ってどんなときに「が」を使うのかは説明できないので、これらの文法知識は暗示的知識です。
1 直感や感覚にかかわるのは暗示的知識
2 生活の中で知らないうちに身についた知識は自転車の例の通り暗示的知識
3 これが答え。学習者が母語話者のように流暢に話せないのは、言語知識が暗示的知識でないから。
4 言語化して説明できるのは明示的知識
答えは3です。
問3 インターアクション仮説
インターアクション仮説とは、学習者が目標言語を使って母語話者とやり取り(インターアクション)する場面で生じる意味交渉が言語習得をより促進させるという仮説です。ロング(Long)が提唱しました。意味交渉はインターアクションの中で生じる意思疎通の問題を取り除くために使われるストラテジーで、以下の3つに分けられます。
【意味交渉】
明確化要求 相手の発話が不明確で理解できないときに、明確にするよう求めること。
確認チェック 相手の発話を自分が正しく理解しているかどうか確認すること。
理解チェック 自分の発話を相手が正しく理解しているかどうか確認すること。
選択肢1
互いに足りない情報を補うタスクの中で、明確化要求、確認チェック、理解チェックなどを用いる機会が得られます。インターアクション仮説にしたがえばこのタスクは意味交渉が生じるので言語習得をより促進させられます。これは正しいです。
選択肢2
一声に読んでいくだけでは意味交渉が生じないのでダメ。
選択肢3
「Aさんの趣味は何ですか?」「ギターです。Bさんは?」「ゲームです。Cさんは?」みたいにチェーンのように質問と答えを繰り返すだけだと意味交渉は生じないのでダメ。
選択肢4
ただ文型に語を代入して言うだけだと意味交渉が起こらないのでダメ。
答えは1です。
問4 最近接発達領域
めっちゃ簡単に言うと、発達心理学者のヴィゴツキーは「できる」と「できない」の間には「誰かの助けがあればできる」という領域があると提唱し、その領域に最近接発達領域(the Zone of Proximal Development)と名前を付けました。この領域にいる人に対するアドバイスやサポートをスキャフォールディング(足場掛け)といい、それを行うことで最近接発達領域から「できる」の領域に移っていけます。
選択肢1には「問題解決の足場」とあり、これがキーワード。
答えは1です。
問5 ピア・ラーニング
ピア・ラーニングとは、同じような立場の仲間(ピア)と一緒に学びあうことです。つまり学習者と学習者が一緒に何か活動をして、一人ではできない学習過程を通して相手から気づきを得たりすることで知識をつけていくことを目的とします。
選択肢1の「教師の介入」というのが間違いです。ピア・ラーニングは同じような立場の仲間(ピア)の間で学びあうことだから、学習者にとって教師はピアではありません。これが答え。
答えは1です。
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