令和6年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅱ 問題5解説
1番
問1
a 伝聞表現「~とのことです」「~とされており」「~ということです」などがあります。
b 使役表現はないですが、受身表現「開発されました」「品種改良された」があります。
c 「県の農林技術センターで新しい品種のりんごが開発されました」は「県の農林技術センターが新しい品種のりんごを開発しました」と言えて直接受身だし、「(Aによって)2年前に開発された」は「(Aが)2年前に開発した」に言い換えられるから直接受身です。また、「『とうりん」は(Aによって)2年前に開発された『もうりん』から品種改良された」も「『とうりん』は(Aが)2年前に開発された『もうりん』から品種改良した」に言い換えられるから直接受身です。ニュースのナレーションに関説受身は含まれていません。
d 談話標識と呼べそうなものは「この度」「さらに」くらいではないかと思いますが… 伝聞表現よりは少ないと思います。
問1の答えはaです。
問2
この文をはじめて聞いた時は、なんかやけに比較が多いなと思いました。「とうりん」と「もうりん」を比較してどうこう言っているんですが、どっちがどうなのか結構分かりにくい印象があります。
「とうりん」は「もうりん」よりも小ぶり
甘味は「とうりん」のほうが強い
「とうりん」も「もうりん」のように病害虫に強く…
問2の答えはcです。
2番
問1
ざっと聞くと、この後部下の佐藤さんは文章を書き始めることになりそうです。その解釈を支えるのが、上司が言った「案ずるより産むがなんとか」。心配するよりもやってみると意外と簡単であることを表す諺「案ずるより産むが易し」を知っていなければ、佐藤さんが書き始めることの理解ができません。めちゃくちゃ難しい聴解だと思います。
あと、この上司は現代だとパワハラっぽい感じがしますね。締め切り直前まで書き始められないくらい困っているのに、気にせず書き始めろみたいなことを言うのは部下からの信頼を失いそうなものです。代わりにやったり、具体的に教えてあげたりしないとダメですね。
問1の答えはbです。
問2
上司は「載せなきゃいけない写真は(私が)先に選んどくから」と発言しました。この文から写真を選ぶのは上司の仕事になったことが分かります。「~ておく/でおく(~とく/どく)」はこのままの形で使うと、述語の主体は話し手になります。すなわち、写真を選ぶことは話し手である上司がやること、という解釈がされます。
しかし、この文の理解ができずに選択肢1⃣を選んだ学習者は、おそらく上の文で省略されている動作主「私」が補完できなかったのかもしれません。あるいは「選んどく」が分からなくて、「選べ」という命令に聞こえたのかもしれません。そういう勘違いがあるのではないかと考えられます。
問2の答えはcです。
3番
問1
男の人の案内によると、女の人の現在地から時計台の方に行き、そこを左に曲がって突き当たったところに店があるそう。しかもその店の近くにはエレベーターがあるらしい。このように音声情報を得ながら地図を見て、情報を照合する能力が必要です。
問1の答えはdです。
問2
女性がいるところから時計台の方に向かい、そこで左折し、突き当たりのところに店があるという条件のもと、女性の位置を逆算すると、女性の位置は2箇所考えられます。それはエスカレーター側にいる場合と、その反対の駅側にいる場合です。エスカレーター側にいる場合のお店の位置は4⃣ですが、駅側にいる場合は1⃣がお店の位置となります。問題不成立の聴解問題ですね。
問2の答えはaです。
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