令和６年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅱ 問題３解説

令和６年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅱ 問題３解説

１番　こ→きょ

　「かんこうきゃく」を「かんきょうきゃく」と言ってて、「こ」が「きょ」になってます。
　「こ」は音声記号で書くと [ko] で、「きょ」は [kʲo]です。子音はどちらも [k] なんですが、「きょ」のほうは子音 [k] が硬口蓋化していて、[k] の後ろに [ʲ] が表記されます。すなわち、軟口蓋で調音する [k] の調音点が硬口蓋の方面へと近づいて発音されているということです。「こ、こ、こ…」と何度も発音しながら、舌を少しずつ前に出していくと「きょ、きょ、きょ…」と音が変わるはずです。舌の位置が硬口蓋方面へと寄っていることで、「こ」が「きょ」になっています。

　ですので、硬口蓋化した軟口蓋破裂音 [kʲ] の図を探せばおｋ。軟口蓋から硬口蓋のあたりで閉鎖がある図はｃ。

　ａ　歯茎破裂音、もしくは歯茎破擦音の図
　ｂ　歯茎硬口蓋摩擦音の図
　ｃ　これが答え
　ｄ　軟口蓋鼻音の図（鼻音化したガ行音[ŋ]）

　答えはｃです。

２番　ん→い

　「ほんやく」が「ほいやく」になっています。
　「い」は前舌が盛り上がり、硬口蓋方面に近づいて発音します。なので舌が硬口蓋方面に近づいている口腔断面図を探せばいいんですが、それはｃだけです。

　ａ　両唇で閉鎖し、鼻腔への通路が開いているから両唇鼻音。[m]など。
　ｂ　歯茎で閉鎖し、鼻腔への通路が開いているから歯茎鼻音。[n]など。
　ｃ　これが答え
　ｄ　後舌が盛り上がっていて高い位置にあるから、たぶん「う」系の音かな？

　答えはｃです。

３番　ど→ろ

　「かんどう」が「かんろう」になっています。
　「ろ」の子音 [ɾ]歯茎弾き音 なので、歯茎に向かって舌が上向きになり閉鎖を作っている図が答えになります。それはｂ。

　ａ　歯茎で閉鎖を作ってるけど舌が上向きじゃないし、鼻腔への通路が開いているので歯茎鼻音[n]など。
　ｂ　これが答え
　ｃ　硬口蓋付近で狭窄を作っているので、硬口蓋摩擦音の「ひ」の子音[ç]など。
　ｄ　軟口蓋で閉鎖をしているので、軟口蓋破裂音の「か」の子音[k]など。

　答えはｂです。

４番　え→げ

　「はんえい」が「はんげい」になっています。
　[e] が [ge] になり、不要な子音 [g] が付加されています。

　答えはｄです。

５番　じ→じゅ

　「じしん」が「じゅしん」になっています。それぞれを音声記号で書いてみましょう。

　「じ」　　[dʑi]
　「じゅ」　[dʑɯ]

　どちらも子音は歯茎硬口蓋破擦音 [dʑ] で同じですが、母音が [i] と [ɯ] で違います。母音の違いは次の図で分かります。

　[i] は非円唇 前舌 狭母音、[ɯ] は非円唇 後舌 狭母音。
　唇の丸めと口の開きは同じですが、舌の前後位置だけ違います。

　答えはｄです。

６番　ひゃ→しゃ

「ひゃっキロ」が「しゃっキロ」になっています。いったん音声記号で書いてみると…

　「ひゃ」　[çʲɑ]
　「しゃ」　[ɕʲɑ]

　違いは [ç] と [ɕ] の子音の違いだけでした。
　[ç] は無声 硬口蓋 摩擦音、[ɕ] は無声 歯茎硬口蓋 摩擦音で、調音点だけが違います。

　答えはａです。

７番　じ→でぃ

　「にんじん」が「にんでぃん」になって、子音 [dʑ] と [d] の違いを問う問題です。

　「じ」　　[dʑi]
　「でぃ」　[di]

　[dʑ] は有声 歯茎硬口蓋 破擦音、[d] は有声 歯茎 破裂音で、調音点と調音法が全然違います。

　答えはａです。

８番　む→ふ

　「むちゅう」が「ふちゅう」になっています。子音 [m] と [ɸ] の違いですね。

　「む」　[mɯ]
　「ふ」　[ɸɯ]

　子音 [m] は有声 両唇 鼻音、[ɸ] は無声 両唇 摩擦音なので、声帯振動の有無と調音法が違います。

　答えはｄです。