令和6年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題6解説
問1 文字カード
選択肢1
文字カードはカード1枚につき1つの文字が書かれています。1枚1枚しか見れないので学習範囲の全体を共有できません。学習範囲の全体が分かるのは五十音図です。この選択肢は間違い。
選択肢2
文字カードはそれを学習者に見せて読ませる使い方をしますので、そのときに字形を見て音が分かるかどうか教師が確認できます。
五十音図でもそれはできないことはないですが、文字カードに比べて五十音図に書かれた仮名は小さくなりがちですから、一つずつ指してこの発音は?という使い方は文字カードよりもやりにくいです。この選択肢は正しいです。
選択肢3
動詞の活用形の規則を理解するには文字カードよりも五十音図が向いています。例えばア行は「書かない」「貸さない」のようにナイ形につかい、イ行は「会います」「書きます」のようにマス形に使えます。こんなふうに活用の規則を理解できるので日本語教育では動詞の活用の場面で五十音図が使われます。文字カードは活用には使えない。この選択肢は間違い。
(素材はこちらからお借りしました)
選択肢4
文字カードは1枚ずつ見せるので、次のカードに行ったら前のカードは見えなくなってしまいます。仮に母語にない音が来たとしても次の瞬間には次のカードに行くので、母語にない音を視覚的にとどめておくには向いてません。一方五十音図ならそれができます。この選択肢は五十音図の利点だから間違い。
答えは2です。
問2 連想法
『国際交流基金 – 日本語教育通信 日本語の教え方 イロハ 第13回』には、連想法についての説明があります。(以下の画像もここから引用)
ひらがな・カタカナ(文字)の連想法は、文字の字形を短期間で覚えられるように工夫した記憶術です。学習者の母語で語頭にその文字に近い発音を持つことばを、絵で学習者に提示します。その絵には、日本語の文字が重ねて書いてあり、絵から音と字形を連想させることによって、印象深く覚えることができ、学習者の記憶を助けると言われています。
連想法では平仮名・片仮名の形を絵の一部で表現して、絵から音や字形を連想させるようなことをします。
選択肢4のカードはまさに連想法です。
答えは4です。
問3 片仮名の指導
選択肢1
カタカナは外国語の原音を忠実に表せるとは限りません。例えば英語の right は日本語では「ライト」とカタカナで表現されますが、 right の発音は [rάɪt] で、「ライト」の発音は [ɾɑito] です。語頭の子音だけをみても [r] と [ɾ] で違う音声です。外来語を表すカタカナといっても日本語なので、日本語の音韻規則で動いてます。外国語の音を忠実に表せるわけではありません。
選択肢2
漢字全体を崩して作られた文字はひらがなです。ひらがなは万葉仮名をくずして作られました。
一方、カタカナは万葉仮名のへんやつくりの一部をとって作られました。
この選択肢は間違い。
選択肢3
英語の file はカタカナで「ファイル」とされ、tiktok は「ティックトック」と書かれます。この「ファ」や「ティ」などは元々の日本語には無かった音で、外国語から借用する過程で新しい音が日本語に持ち込まれました。こういう音を外来音と言います。この選択肢が答えです。
選択肢4
もし横書きが「ー」と横線で書きますが、縦書きだったら「|」のように縦線で長音を表します。この選択肢は間違い。
答えは3です。
問4 ディクテーション
ディクテーションとは、音声を聞いて、聞いた内容をそのまま書き取る活動のことです。この問題に書かれているテストでは、先生がことばを言って、それを学習者が聞き取ってカタカナで書くみたい。ディクテーションです。
選択肢1
ディクテーションは聞こえた音をただ書く作業なので、意味には焦点が当たりません。ただ書くだけ。したがってこのテストでは、カタカナの意味を理解しているかどうかは教師には分かりませんが、カタカナで書けるかどうかは分かります。これが答えです。
選択肢2
カタカナで書かせるテストだからカタカナで書けるかどうかは測定できます。また、カタカナで書けた場合は同時にカタカナの音を聞き取れたことも分かります。この選択肢は前の文が間違いです。
選択肢3
カタカナの音を聞き取って正しく書けた場合は、カタカナの音を聞き取れたことが分かります。また正しく書けた場合はカタカナの字形をしっかり認識できていることも分かります。この選択肢は前の文が間違いです。
選択肢4
正しく書けた場合はカタカナの文字を認識できていることが分かりますが、ただ聞こえてきた音を書くだけのテストなので、書けたからといってその意味が理解されているかどうかは教師には分かりません。前の文も後ろの文も間違い。
答えは1です。
問5 字形の複雑さ
部首を使って漢字を整理する目的でやるべき練習は…
選択肢1
この練習は部首ではなく、書き順1画1画をパーツにしてどんな漢字ができるかを考えさせる練習です。部首の練習にはならない。
選択肢2
くさかんむりとかうかんむりとか部首が並んでて、その下に当てはまるパーツを選ばせる問題です。部首の練習になります。これが答え。
選択肢3
あと1画つけ足したり、1画取り除いたりして正しい漢字を書かせる練習です。部首ではなく字形全体に焦点を当てた活動なのでこれは間違い。
選択肢4
読み方を書かせる問題だから部首には焦点が当たってません。この選択肢は間違い。
答えは2です。
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