令和6年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題1(15)解説
(15)主題化された名詞の格
主題を表す「は」などが無い文のことを無題文と言います。(1a)は「は」がないので無題文です。
一方、主題を表す「は」などがある文を有題文と言います。(1b~d)は「は」があるので有題文です。
無題文(1a)と有題文(1b~d)は統語的に関係しています。例えば(1a)の文に含まれるガ格名詞「子どもたち」を主題にしようとしたら、「子どもたちは」と「は」を使って(1b)の文になります。デ格名詞「公園」を主題にしようとしたら「公園では」となって(1c)になります。こんな感じで、無題文に含まれる特定の成分を主題にして有題文にすることを主題化と言います。
(1)a 子どもたちが公園で虫を捕まえている。 <無題文>
b 子どもたちは公園で虫を捕まえている。 <有題文:ガ格名詞「子どもたち」を主題化>
c 公園では子どもたちが虫を捕まえている。 <有題文:デ格名詞「公園」を主題化>
d 虫は子どもたちが公園で捕まえている。 <有題文:ヲ格名詞「虫」を主題化>
この問題は「主題化された名詞の格」だそうです。全ての選択肢を見ると「は」が含まれているから有題文ですね。では、逆の操作をしてみましょう。「は」を含まない無題文を考えてみて、「は」ではなくもともと何の助詞だったか確認します。
選択肢1
彼は声が大きい。 <有題文>
彼の声が大きい。 <無題文>
主題化されていた「彼」はもともと「彼の声」という連体修飾表現の連体修飾部でした。主題化された名詞の格は「の」です。
選択肢2
私の時計は針が折れている。 <有題文>
私の時計の針が折れている。 <無題文>
主題化されていた「私の時計」はもともと「私の時計の針」という連体修飾表現の連体修飾部でした。主題化された名詞の格は「の」です。
選択肢3
この服はリボンが付いている。 <有題文>
この服にリボンが付いている。 <無題文>
主題化されていた「この服」はもともとニ格名詞「この服」でした。主題化された名詞の格は「に」です。
選択肢4
ダックスフントは耳が垂れている。 <有題文>
ダックスフントの耳が垂れている。 <無題文>
主題化されていた「ダックスフント」はもともと「ダックスフントの耳」という連体修飾表現の連体修飾部でした。主題化された名詞の格は「の」です。
選択肢5
あの絵は色がきれいだ。 <有題文>
あの絵の色がきれいだ。 <無題文>
主題化されていた「あの絵」はもともと「あの絵の色」という連体修飾表現の連体修飾部でした。主題化された名詞の格は「の」です。
選択肢3だけ無題文のニ格名詞を主題化したもので、それ以外は連体修飾表現の連体修飾部を主題化したものです。
答えは3です。
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