統合的関係と範列的関係について
「新しい服がほしい」という文において、「新しい」と「服」、「服」と「が」、「が」と「ほしい」のように時間に沿って線状に連ねられた各要素同士が持つ連想関係を統合的関係(syntagmatic relation)、あるいはシンタグマティックな関係と呼びます。「新しい」と「服」の間にはシンタグマティックな連想関係があるため、結びついて「新しい服」という連鎖を作ることができます。しかし、「深い」と「服」、「新しい」と「昔」の間にはそのような連想関係がないため、「深い服」や「新しい昔」のような連鎖を作ることはできません。統合的関係は「新しい」と「服」のような語のレベルについても言えますし、形態素 atarasi- と -i のような形態素レベルにも言えるものです。
「新しい服がほしい」という文における「新しい」は「綺麗な」「赤い」「安い」などの要素と交替でき、また「服」も「スマホ」「人形」「カーテン」などの要素と交替できます。このように、ある文における要素がそれを関連性を持つ要素と交替できるとき、それらの要素同士が持つ連想関係を範列的関係(paradigmatic relation)、あるいはパラディグマティックな関係と呼びます。語と語の同義関係(「パソコン」と「PC」など)、類義関係(「美しい」と「綺麗」など)、包摂関係(「果物」と「りんご」など)、対義関係(「新しい」と「古い」など)は全て範列的関係に含まれるものです。
参考文献
池上嘉彦(1975)『意味論―意味構造の分析と記述』大修館書店
国立国語研究所(1985)『語彙の研究と教育(下)』83-84頁.大蔵省印刷局
森山卓郎・渋谷勝己(2020)『明解日本語学辞典』117頁.三省堂
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