JFL、JSL、JHLとは?
第二言語習得は、その学習環境によって教師や教室の役割、学習者の自然なコミュニケーションをする機会、自然なインプットに触れる機会などの様々な面で異なります。ここではJFL、JSL、JHLについてまとめます。
JFL(Japanese as a Foreign Language:外国語としての日本語)
日本国内ではなく、海外の学校で外国語科目として学ぶ場合の日本語をJFL(Japanese as a Foreign Language:外国語としての日本語)と言います。例えば海外の高校や大学などで、日本語を外国語の一つの科目として学んでいるような場合を指します。JFLの環境ではいくつかの特徴があります。授業では必ずしも日本語母語話者が教師を務めているわけではなく、多くの場合は日本語を母語としない現地の教師が教えています。教師と学習者の母語が一致することが多いため、教師は日本語を効率的に教えるために媒介語を使用することができますが、媒介語の使用によって日本語のインプットやコミュニケーションが少なくなってしまいます。ひとたび教室外に出ると日本語を使う必要性も機会もまずないので、授業が終われば日本語のインプットを全く得られないかほとんど得られないことが多いです。したがって自然なコミュニケーションを通した習得が起こりにくい傾向があります。
JSL(Japanese as a Second Language:第二言語としての日本語)
日本国内で生活に使う手段として学ぶ日本語をJSL(Japanese as a Second Language:第二言語としての日本語)と言います。例えば日本国内の日本語学校で日本語を学ぶ留学生などが挙げられます。JSLの環境では、教師はほぼ日本語母語話者の教師です。学習者の母語はバラバラなので、JFLとは異なり特定の媒介語を使用して教育を行うことが難しいため、授業では媒介語を用いずに日本語だけが使われる傾向があります。このような環境により、JSL学習者は多くの日本語のインプットに触れることができ、日本語でのコミュニケーションも増えます。また、日本国内であることから教室外でも日本語が使われているため、日本語を使う必要性が高く、自然なコミュニケーションを通した習得の機会に恵まれています。
JHL(Japanese as a Heritage Language:継承語としての日本語)
海外で現地語が使われている環境の中で、子どもが親から受け継ぐ継承語として学ぶ日本語をJHL(Japanese as a Heritage Language:継承語としての日本語)と言います。海外在住の日系人で日本語を母語として習得していないものの、両親や祖父母が日本語を母語としているために日本語を継承する場合などが典型的なJHLの環境です。このようなJHLの環境では、社会からの日本語のインプットが不足するので日本語を発達させることが難しくなります。多くの場合、JHLは学校で学ぶことはなく、両親や祖父母、日系人のコミュニティなどが教師となって教えられます。しかし彼らは日本語教育の専門家ではないので、カリキュラムもなければ教授法もなく、教科書も教材もない状況が多いです。教師を務める者に日本語教師としての職業意識が芽生えることもないので長続きもしません。現地の社会で日本語が使われていないためにその必要性が低く、これらの理由から授業がうまくいきにくいです。
参考文献
大関浩美(2010)『日本語を教えるための第二言語習得論入門』89-91頁.くろしお出版
中島和子(2010)「JHLの枠組みと課題 -JSL/JFLとどう違うか-」『母語・継承語・バイリンガル教育研究、プレ創刊号(増補復刻版)』1-15.
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