接触仮説とは?(G. W. Allport 1954)

接触仮説(contact hypothesis)

 接触仮説(contact hypothesis)はオルポート(G. W. Allport 1954)が提唱した偏見に関する仮説で、偏見を持つ人がその偏見の対象である集団との接触を増やすことによって偏見が低減していくとする仮説のことです。

 Prejudice (unless deeply rooted in the character structure of the individual) may be reduced by equal status contact between majority and minority groups in the pursuit of common goals. The effect is greatly enhanced if this contact is sanctioned by institutional supports (i.e., by law, custom or local atmosphere), and provided it is of a sort that leads to the perception of common interests and common humanity between members of the two groups.
 (偏見は(個人の性格構造に深く根ざしていない限り)、共通の目標を追求する過程で多数派と少数派の間に平等な地位での接触があることで軽減される可能性があります。この接触が法や慣習、地域の雰囲気など、制度的支援によって承認され、かつ両者が共通の利益や人間性を認識できるようなものであれば、その効果は大いに高まります。)

 以上の内容は Allport(1954: 281)の偏見に関する一般的な予測を述べたものです。この仮説によれば、集団間の接触が次の4つの条件を満たしている場合に偏見は低減され、関係改善に効果的に働く可能性が高いとされています。(実際の4条件の記述は著書の中に散在しているので、具体的なページを示すのが難しいです)

 (a)平等な地位(equal status)
 異なる集団が平等な立場で関わること。
 
 (b)共通の目標(common goals)
 異なる集団が共通の課題や目標に取り組むこと。
 
 (c)集団間の協力(intergroup cooperation)
 異なる集団が競り合うことなく協力して目標を達成しようとすること。
 
 (d)当局、法律、または慣習による支援と制裁(support and sanctions by authorities (or law or custom))
 当局や社会が集団間の接触を支持すること。

 これらの条件を満たした集団間の接触では、偏見の対象である集団に対して抱いているステレオタイプに反証が与えられる結果となります。また異なる集団の人々に遭うことで偏見を持つ人(自分)と彼らとの共通点が明らかになることで否定的なステレオタイプが事実に基づいていないことに気付くことができ、結果として肯定的な態度が生まれて偏見が低減されると考えられています。

参考文献

 Allport, G.W. (1954). The nature of prejudice. Reading, MA: Addison-Wesley.
 山内光哉(監)・白樫三四郎(訳)・利島保(訳)・鈴木直人(訳)・山本力(訳)・岡本祐子(訳)・道又爾(訳)(2008)『アイゼンク教授の心理学ハンドブック』734-736頁.ナカニシヤ出版




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