コミュニティ・ランゲージ・ラーニング(Community Language Learning:CLL)
コミュニティ・ランゲージ・ラーニング(Community Language Learning:CLL)とは、アメリカの心理学者カラン(Charles A.Curran)がカウンセリングの理論や技術を言語教育に応用して開発した教授法です。学習者の不安や緊張を取り除くことが言語習得を促進するという考え方に基づき、教師をカウンセラー(counselor)、学習者をクライアント(client)と考え、カウンセラーは目標言語が用いられる環境に脅威を抱くクライアントの不安や緊張を取り除き、学習者の自立を促そうとします。この教授法はカウンセリング・ラーニング(Counseling Learning:CL)とも呼ばれます。
この教授法にもとづく授業は、会話パートとそれを振り返るパートの2つに分かれます。
会話パートでは学習者は円形になって座り、教師は学習者の脅威にならないようにその外側、つまり学習者の背後に立ちます。円の真ん中には学習者の発話を録音するテープレコーダーを置いておきます。はじめの段階では、学習者は自分が話したいことを母語を用いて自由に話してもいいですし、自信があれば目標言語で話してもよく、話したくなったら話し、話したくなければ話さないことも可能です。教師は母語で話された内容を学習者の耳元で目標言語に翻訳して伝え、学習者は心の準備ができた場合にそれを繰り返して発話します。学習者のレベルが上がるにつれて母語の使用を徐々に減らし、教師の助けなしで目標言語で言いたいことを言うように促していきます。
振り返りパートでは、会話パートでどう感じたかなどを媒介語を用いて話し合ったり、録音された発話を一文ずつ再生して、教師はそれに対する説明を媒介語で行う振り返りを行います。
この教授法もとづく授業を行うには、教師は学習者の母語と目標言語の二言語を高いレベルで扱えなければならず、また学習者の不安や緊張を取り除く技術が要求されます。さらに、その授業で教えるべき項目はあらかじめ決められておらず、学習者が自由に話した内容にもとづいた後行シラバス型の授業を行うことになるので、授業の準備があらかじめできないというデメリットもあり、教師側の負担が大きいです。
参考文献
石田敏子(1988)『日本語教授法 改訂新版』33-34頁.大修館書店
横溝紳一郎(1998)「CL/CLL(コミュニティ・ランゲージ・ラーニング)」『日本語教授法ワークショップ』82-102頁.凡人社
木村宗男・阪田雪子・窪田富男・川本喬(1989)『日本語教授法』60-61頁.おうふう
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