副詞(adverb)
副詞(adverb)とは、類型論的には名詞以外を修飾する機能を持つ様々な語全般を指す語類であり、日本語においては自立語で活用はせず、主に用言(動詞、イ形容詞、ナ形容詞)を修飾する機能を持った語を指します。(1)~(3)のように用言を修飾するのが一般的ですが、(4)のように副詞が別の副詞を修飾したり、(5)のように「の」を伴って名詞を修飾することもあります。
(1) ゆっくり歩く。
(2) とても寒い。
(3) 相当危険だ。
(4) とてもゆっくり歩く。
(5) かなりの人出
なお、「深く考える」「恐ろしく速い」「急いで行く」などにおける「深く」「恐ろしく」「急いで」は、形態的にはイ形容詞「深い」、ナ形容詞「恐ろしい」、動詞「急ぐ」の連用形にあたりますが、統語的には「考える」「速い」「行く」などの用言を修飾しており、機能的に見ても副詞と同等の働きをしています。このような文の成分は副詞には分類されないものの、副詞的修飾成分(副詞的成分)と呼ばれることがあります。
副詞は意味的に様態副詞、程度副詞、陳述副詞の三つに分けることが多いです。
様態副詞(情態副詞)
動詞を修飾し、その動詞が表す動きの展開過程の局面や動きの結果の局面を表す副詞を様態副詞、または情態副詞と言います。様態とはその動きのありようのことであり、これを表す副詞は動きがどのように行なわれるのか、動きの結果どのようになったのかを表します。したがって様態副詞に分類される副詞は「どのように」「どんなふうに」などに意味的に対応します。擬音語や擬態語などのオノマトペも様態副詞に含まれます。
(6) こっそり家を抜け出した。
(7) しっかり挨拶した。
(8) ニコニコ笑う。
(9) キラキラ光る。
(10) こうしたら良いと思う。
程度副詞
主に形容詞などの状態性の語を修飾して、その量や程度、度合いを限定する副詞を程度副詞と言います。程度副詞は被修飾成分の量や程度、度合いの値を定めることから、「どのくらい」「どの程度」などに意味的に対応します。
(11) とても怖い。
(12) 少しとがっている。
(13) とても速く逃げた。
(14) たくさんの人
陳述副詞
陳述副詞は、述語の陳述に呼応して用いられ、話し手の伝達的態度や事態に対する認識、評価を表す副詞を指します。例えば(15)は、述語「分からない」が表す事態に対する話し手の否定的な認識を表す「まったく」が用いられています。(16)では述語「綺麗なんだ」が表す事態に対する話し手の感動を表すために「なんて」を用いています。このように話し手の主観を表す副詞が陳述副詞です。
(15) まったく分からない。
(16) なんて綺麗なんだ。
(17) なかなかできない。
(18) まるで鳥のようだ。
(19) なぜ分からないのだろうか。
参考文献
鈴木孝明(2015)『日本語文法ファイル―日本語学と言語学からのアプローチ―』11頁.くろしお出版
森山卓郎・渋谷勝己(2020)『明解日本語学辞典』135頁.三省堂
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