縮約・短縮・省略(abbreviation/shortening)
語の一部が省略されて語形が短くなること、あるいは語の一部を省略して新しい語形を造り出すことを縮約、短縮、省略(abbreviation)と言います。縮約によって作り出された語は略語や略語形(一般に呼ばれる省略語)と呼ばれます。略語が生まれるには、「もとの語が比較的長大であり、かつたいへんよく使われるもの」(国立国語研究所 1985: 69)という条件があります。以下は日本語の略語の例で、縮約された部分を下線部で表しています。
(1) リモコン < リモートコントローラー
(2) コンビニ < コンビニエンスストア
(3) 終電 < 最終電車
(4) 民放 < 民間放送
次は英語と中国語の縮約の例です。縮約された部分を下線部で表しています。
(5) exam < examination
(6) info < information
(7) photo <photograph
(8) 网红 < 网络红人 ※インフルエンサー
(9) 五一 < 五一劳动节 ※メーデー
(10) 双休 < 双休日 ※土日休み
縮約を経て残された語の一部の出現率は、前部要素>後部要素>中央の要素の順で高いです(玉村 2018: 59-60)。例えば「リモコン」は「リモート」と「コントローラー」のそれぞれの語頭だけが取り出されていますし、「コンビニエンスストア」も語頭の一部だけが取り出されています。
頭文字語/頭字語
日本放送協会(Nippon Hoso Kyokai)の頭文字をとって「NHK」とするように、最初の文字のみを用いて作られる語のことを頭文字語、もしくは頭字語と言います。
(1) NHK < Nippon Hoso Kyokai
(2) LA < Los Angels
(3) WWW < World Wide Web
(4) 高富帅 < 高大 富有 帅气 ※高身長・金持ち・イケメン
(5) 北上广 < 北京、上海、广州 ※中国の三大都市
(1)~(5)はそれぞれの頭文字を一つひとつその文字に対応した発音で読み上げていますが、(6)~(8)は一字ずつ読み上げるのではなく、それ全体で一つの単語のように発音します。例えば日本語では CEFR を「シーイーエフアール」とは読まず、一つの単語とみなして「セファール」と読みます。UNESCO も英語では [ju(ː)neskoʊ]、NATOは [neɪṭoʊ] と読まれます。
(6) CEFR(セファール) < Common European Framework of Reference for Languages
(7) UNESCO(ユネスコ) < The United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization
(8) NATO(ナトー) < North Atlantic Treaty Organization
頭文字語はその読み方によって(1)~(5)と(6)~(8)に分けられ、後者のように一つの単語として読むのをアクロニム(acronym)と呼ぶこともあります。
参考文献
国立国語研究所(1985)『語彙の研究と教育(下)』69-73頁.大蔵省印刷局
玉村文郎(2018)「対照語彙論」『朝倉日本語講座4 語彙・意味』220-223頁.朝倉書店
西原哲雄(2012)「語の構造について-形態論-」『言語学入門(朝倉日英対照言語学シリーズ1)』58-60頁.朝倉書店
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