「看護婦」が「看護師」になるようなポリコレの波

目次

ポリコレの影響で変わった表現

 授業で「看護婦」が「看護師」になるような、男女の性役割の固定化を解消しようとして変わった表現をちょっと扱ったときに、自分にそれほど手駒がないなあと思って勉強しようと思いました。とりあえずこの本がアメリカのポリコレの話をしている本で、目次を見ると一部言語の話がありそうだったので買いました。
 ポリコレは何も言語だけに限らないので、言語以外のこともたくさん書いてあるのですが、それでも一部有用な情報がありました。それが米国下院決議 H.Res.8「第117議会下院規則の採択等に関する決議」(H.Res. 8 – Adopting the Rules of the House of Representatives of the One Hundred Seventeenth Congress, and for other purposes)です。このセクション2の(e)”Gender-Inclusive Language”(ジェンダーに配慮した言語表現) に、その言い換え一覧が掲載されています。

項目 内容
Section 2 (e)(1) 「seamen(船乗り)」を「seafarers(海-旅をする人)」に言い換える。
Section 2 (e)(2) 「Chairman(議長、委員長)」を「Chair」に変更する。
Section 2 (e)(3) 次の表現を以下のように改める。
 father, mother → parent(親)
 son, daughter → child(子)
 brother, sister → sibling(きょうだい)
 uncle, aunt → parent’s sibling(親のきょうだい)
 nephew, niece → sibling’s child(きょうだいの子)
 husband, wife → spouse(配偶者)
 father-in-law, mother-in-law → parent-in-law(義理の親)
 son-in-law, daughter-in-law → child-in-law(義理の子)
 brother-in-law, sister-in-law → sibling-in-law(義理のきょうだい)
 stepfather, stepmother → stepparent(継親)
 stepson, stepdaughter → stepchild(継子)
 stepbrother, stepsister → stepsibling(義理のきょうだい・継きょうだい)
 half brother, half sister → half-sibling(異父母・異母父のきょうだい)
 grandson, granddaughter → grandchild(孫)
 ※first cousin(いとこ)は変更なし
Section 2 (e)(3)(A) 「submit his or her resignation(辞職届を提出する)」を「resign(辞職する)」に変更する。
Section 2 (e)(3)(B) 「he or she serves(彼または彼女が務める)」を「such Member, Delegate, or Resident Commissioner serves(当該議員、代表議員又は駐在代表委員が務める)」に変更する。
Section 2 (e)(3)(C) 「he or she holds(彼または彼女が有する)」を「such Member, Delegate, or Resident Commissioner holds(当該議員、代表議員又は駐在代表委員が有する)」に変更する。
Section 2 (e)(6) 「himself or herself(彼自身または彼女自身)」を「themself(その人自身)」に変更する。

 ”man”とか”men”は男性を表すので、それを使わない言い方にしたり、he, she, his,herも使わないという徹底ぶりです。高校で元女性の生徒に she を使った教師がクビになったという実例がある(福田 2021: 34)そうで、代名詞は本当にアメリカでは危ないそうです。そんなことになってるとは…

 ちなみに福田(2021: 29-31)では、他の言い換えについても書かれてます。

 (1) Black → African American
 (2) Merry Christmas → Happy Holidays
 (3) Christmas Tree → Holiday Tree
 (4) Ladies and Gentlemen; Boys and Girls → Hello, everyone
 (5) Businessman → Businessperson
 (6) Handicapped → Physically challenged

 (2)は特定の宗教専用のことばなのでダメ。(4)もおそらく性的マイノリティを含んでいないからダメなんでしょう。あと、背が低い人を表す short は vertically challenged(垂直方向に挑戦している人)になってるそうです。これは(6)と同じ構造。

日本語の例

 日本語のこういう例を探して本を読んだんですけど、英語の例がたくさん載ってて違う方面の勉強になりました。一応ここには私が見つけたものを書いておきます。

 看護婦 → 看護師
 保母・保父 → 保育士
 スチュワーデス・スチュワード → キャビンアテンダント(CA)

 あと「お母さん食堂」という名前についてネットで議論になってたこともありましたね。それもポリコレの流れの一つだと思われます。あとは、「主人」「夫」「旦那」「嫁」「家内」「妻」のような言い方も「つれあい」「パートナー」「夫さん」「妻さん」みたいな言い方に変えようと提案する人もいるみたいです(※1)。

 性別とは関係ないのですが、これも配慮の一つで…

 障害者 → 障碍者、障がい者

参考文献

 福田ますみ(2021)『ポリコレの正体 「多様性尊重」「言葉狩り」の先にあるものは』方丈社
 ※1 『1.配偶者の呼び方ひとつで分かる、多様な結婚観。言葉の選択が、自分の「意志」や「スタンス」の表明に。|関東学院大学




コメント

コメントする

目次