ここでは中国の大学の日本語教師求人の探し方や求人情報で注意するポイントについて、私の経験を交えながらまとめます。中国での日本語教師に興味を持っている方に向けて有益な情報だと思います。その他何か質問があればコメント、メッセージください。
中国の大学の求人はどこで探す?
中国の大学は日本とは違い、新学期が9月(前期)と3月(後期)に始まります。9月あるいは3月の渡航に間に合うためには、余裕を見てその2~3か月前くらいからビザの手続き等をしなければいけません。なのでその前に求人情報に申し込んだり、面接したりして採用される必要があります。
1年の中でも求人情報が出やすい時期は9月~12月、3月~6月くらい。12月までに応募して採用されれば翌年3月の新学期には間に合いますし、また6月までに採用されれば9月の赴任に間に合うからです。それを過ぎると手続きの関係で新学期の始まりには間に合わない可能性が高くなります。
では、その求人はどこにあるかを3つ紹介します。
1.日本の日本語教師求人サイト
私がよく見てたのはこの4つです。時期によっては同じ求人が別のサイトにあったりするので、大学の担当者もここに求人を出そう、みたいに決めてるようです。
日本語教育学会の「教師募集情報」
ここの求人情報は1年通して見てみた感じ、日本国内の日本語学校、専門学校、大学の日本語教師に関する求人情報がとても多いですが、その中には中国だけでなく、その他外国の求人も比較的多く見られます。中国のは1年で10件くらいの感覚です。学会のサイト内にあることからある程度信頼できそうな雰囲気がありますが、実際は求人情報の掲載希望があったものをそのまま載せているそうなので、求人情報はちゃんと見てください。
NIHON MURA(日本村)の「日本語教師・職員求人情報」
ここの中国の求人数も1年で10件くらい見られます。私もここで求人を見つけて応募し、採用されるに至ってます。求人情報を決められたルールにしたがって掲載する、しないの判断をしているので比較的安心できます。
日本語教師の集いの「求人情報掲示板」
私がはじめて中国の大学に行ったとき、その大学の求人はここで見つけました。当時は中国の求人がまあまああった印象なんですが、最近だとそれほど多くありません。でもちらほら掲載されることがあるので、その他のサイトと一緒に確認するといいと思います。日本語教師の関連サイトとしては結構有名で、日本国内の求人はかなり多いです。
にほんご書店そうがく社の「日本語教師募集情報」
ここにも中国の求人がまあまあ出てきます。中国というよりも、むしろ中国以外の海外の求人が多い印象です。こちらでは求人掲載の基準を設けていて、掲載依頼者に対して求人に関する細かな情報の提出を求めているのである程度信頼できるサイトです。
2.中国の大学に直接連絡する
「1.日本の日本語教師求人サイト」に求人情報が載ってない大学の場合は、大学に直接連絡するのが早いです。自力で求人を探しに行くことになりますが、こちらが希望する大学にピンポイントで連絡できますから結果の満足度は高いと思います。
まず、気になる大学を探したら、その大学に日本語科があるかどうかを確認してください。「外国语学院」や「日语」の文字を探すのがいいです。もし日本語科があればチャンス。
①大学のサイトから「人才招聘」や「人事处」のページに行く
②そこからメールアドレスを探す
③メールを送る
簡単な自己紹介と求人があるかどうかを日本語と中国語で併記したメールを送れば大丈夫です。人事部の人たちに向けて中国語で書いておき、もし求人がある場合は日本語科の採用担当(日本語できる人)に転送するので直接コンタクトできるかもしれません。10年前から変わらず、中国の日本人日本語教師はずーっと不足しています。相手側にとっても連絡が来るのは嬉しいことです。
ちなみに、gmailで送ると迷惑メールに入って確認されなかったりするかもしれません。向こう側のメーラーのシステムによりますが。中国では google などのサイトが見られないんですけど、でも yahoo だけはずっと見られます。だから私は yahoo のメールアドレスを使って送る工夫をしてました。
また、日本とは違って返信が来るまでが長いのは知っておいてください。1週間とか返信が来ないってこともまあまああって、そうすると届いてるかどうか不安になったりします。私は「このメールが届いているか心配なので、見たら簡単に返信いただけますか」みたいなちょい催促っぽい文言を入れておくようにしています。参考までに。
3.その他(SNSや姉妹関係)
SNSからすでに中国で働いている先生に連絡をとって、その学校で欠員があるかや周囲の学校がどうかなどと聞いてみるのは良いと思います。ただし、日本人日本語教師が別の日本語教師を採用する職権は当然ないので、現実的には同学校の日本語科の主任に連絡をつないでもらったり、他の大学の先生につないでもらったりということになると思います。
また、この方法は多くの人にとってほとんど可能性がないかもしれませんが、姉妹都市や姉妹校の関係から中国に渡った方を知っているので一応紹介します。日本のA市と中国のB市が姉妹都市の関係にあったり、あるいは日本のA大学と中国のB大学が提携していたりする場合、少ないですが、人材交流を行う観点で日本語教師を募集する例があります。皆さんお住まいの街にそれがあるかどうか、あるいは出身の大学などにそんな話があるかなどを確認するのも一つの手です。
求人情報の注意ポイント
求人情報で特に注意したほうがいいポイントとして、ここでは給料、住まい、重点大学かどうか、仕事内容の4つ紹介します。海外求人への問い合わせはトラブルが多くなりがちなので、内容をあらかじめ確認しておく必要があります。なお、4年制大学を卒業していることはビザ取得の観点から必須だそうです。
1.給料
ここ1年くらい中国の求人情報をずっと見てきた感じだと、給料は大学のレベルによって6000元~12000元くらいで結構幅があります。もちろん多ければ多いに越したことはありませんが、給料が高めに設定されている大学ほど修士、博士の先生を募集しています。すなわち偏差値の高い大学です。
どのくらいの額で十分だと感じるかは、どの都市で暮らし、住まいが無償提供かどうか(次項でまとめ)などとも相談が必要ですし、他にも帰国の往復航空券を負担してくれるかどうか、長期休暇中の給料があるかどうかも関係します。
帰国の往復航空券を負担してくれるかどうか
中国の大学は、前期が9月初め~翌年1月上旬、後期が3月~7月上旬で2学期制です。二つの学期の間はそれぞれ冬休みと夏休みで、全ての学生は故郷に帰りますし、日本語教師もいてもやることがないので普通は帰国します。その帰国にかかる往復航空券は、普通はどの大学も往復1回分だけ負担してくれることが多いです。以前私が勤めていた学校は8000元を上限として往復1回分負担してくれました。
冬休みと夏休みの2回帰国する場合は、その片方だけ負担してくれるという具合です。もし2回負担してくれる大学があるなら本当にいい大学だと思います。求人を見るときは、ちゃんと負担してくれるかどうか確認してください。
長期休暇中の給料があるかどうか
私が以前勤めていた大学では、冬休みと夏休みは給料が出ませんでした。契約を隅々読んでなかったので大変後悔したんですが、翌年の契約で交渉して、次年度から長期休暇中も給料をもらえるように変更してもらった経緯があります。そうでないと生活できないので。ですから長期休暇中に給料をもらえるかどうかは絶対に確認してください。
外国人教師は1年ごとに契約することになります。
例えば、新入生がやってくる9月に着任するのであれば、契約書に書かれる契約期間は9月の初めから学期末の7月上旬であることが普通です。一年で雇用を終える場合、7月上旬以降は契約期間に含まれないので給料はありません。しかし、次の年も契約を継続するなら7月上旬からさらに1年間の契約期間になりますので夏休みも冬休みも契約期間に含まれます。これはおそらく一般的な契約期間のモデルです。大学にとって多少異なると思うので必ず確認してください。
2.住まい
求人を見ると大学側が住まいを提供することがほとんどですが、過去には提供せずに自分で借りるよう書かれている求人も見たことがあります。中国の空港についてから直接用意された部屋まで送ってもらえるほうが安心ですから、住まいの提供があって、それが無料かどうかは確認してください。
多くの大学では教員や教員の家族が住む居住区が大学に隣接しています。大学が提供する住まいは教室まで歩いて数分ということもあるので通勤の心配はほとんどありませんが、念のために距離なども聞いてみてはどうでしょうか。
また、部屋の間取りと家具・家電がついているか、水道光熱費やネットの通信費なども上限ありで負担してくれる可能性もあります。
3.重点大学かどうか(211や985)
せっかく中国の大学に行くならレベルの高い大学に… と思う人もいるかもしれないので、中国において高い評価を受けている大学についてまとめます。
中国教育部は1995年、21世紀に向けて科学と教育を通じて国を活性化するという目的を達成するために、全国の大学から約100の大学を重点大学として選びました。21世紀の100校なので211プロジェクト(211工程)と呼ばれています。中国全土には3000近くの大学があり、そのうち本科と呼ばれる大学は約1200校ありますが、この中のたった100校です。国からの予算が重点的に割かれることから研究も盛んに行われていて、入学するにも高得点が必要です。もしレベルの高い大学へと考えているのであれば211の大学は一つの基準になります。
さらに1998年、中国教育部は世界レベルの一流の大学を育てる目的で、211プロジェクトで選ばれた大学から更に39の重点大学を選んでいます。これは98年5月に下された決定であることから985プロジェクトと呼ばれています。この39校は中国の中でもトップの大学なので、単なる日本語教師ではなく、日本語教師兼研究者みたいな人が求められてきます。
211と985の大学を確認するのは「中国国家重点大学一覧(211プロジェクト指定校)」がとっても分かりやすいです。
このように書くと誤解させてしまうかもしれませんが、上記の重点大学に含まれていない大学でも待遇次第では全然問題ありませんし、むしろこっちのほうが日本語教師の求人はたくさんあります。
4.仕事内容
日本の日本語学校はゼロから積み上げて徐々に… みたいなカリキュラムが普通なんですが、中国の大学ではその文法的な知識の積み上げは中国人の先生が中国語で全部やってくれるので、日本人教師がすることと言えばもっぱら会話。学生たちに本物の日本語を提供するためにいるといっても大げさな言い方ではないくらいで、おそらくどこの大学でも会話の授業は必ず任されます。だから会話の授業を準備しておくのは必須。その他、作文、読解、聴解、日本概況、論文指導、スピーチ指導なども担当するかもしれません。その点、何の授業をすることになるかは担当者に聞いてみてください。先に知ることができればそれぞれどうやって授業するかを考えておけます。通常は1学期で15回×90分授業の授業を任されます。
何を担当するかだけでなく、週にどのくらいの授業があるかも聞くといいです。
以前いた大学では午前に2つの授業(4コマ)、午後に3つの授業(6コマ)の枠があり、平日全部で25の授業枠がありました。私はこのうち毎週5つ~7つ(10コマ~14コマ)の授業を担当していました。1コマ45分なので、1週間の実働は14コマだとしても10時間くらいです。授業以外の時間は学校に来なくても、何なら自宅にいても全然構わないので、授業の準備さえできてしまえば自分の時間がかなりとれますが、任される授業が多すぎると授業の準備が追い付かなくなったりする可能性があるので確認は必要と思います。
まとめ
海外の日本語教師は国内の日本語教師とは全く違う形の日本語教育をしています。現地の需要にあった形でネイティブな日本語を提供し、中国人の先生と協力しながら仕事をうまく分担して学生を育てています。日本語教師として日本語を教えながらも、現地では少数派の扱いを受けてちやほやされたり、時には差別を受けたりするかもしれませんが、それは日本国内で得られない経験です。
なんとなく海外に行ってみたいけど勇気が… みたいな方もいるとは思いますが、勇気を出して中国へ行ってみませんか。日本語教師の需要はここ最近ずっと高いですし、現地には日本語を学びたい人もとても多いです。ダメなら1年で契約を切って帰ることができます。もし居心地が良ければもう1年更新して滞在することもできます。
今回ここにまとめたことが中国へと考えている方のお役に立てたら嬉しいです。ありがとうございました。
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